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【MGCファイナリスト】鈴木亜由子選手インタビュー Vol.2

2018.10.26


2019年9月15日に実施が決まった東京オリンピック男女マラソン代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」出場権を懸けて展開されている「MGCシリーズ」は、8月26日に行われた「北海道マラソン」から、いよいよ2期目となる「2018-2019シーズン」がスタートしました。12月には、男子の次戦として「福岡国際マラソン」が12月2日に、女子の次戦としては「さいたま国際マラソン」が12月9日に、それぞれ開催を控えています。
今回のMGCファイナリストインタビューは、鈴木亜由子選手(日本郵政グループ)です。
中学生のころからトップ選手として注目を集め、世界ジュニア選手権(現U20世界選手権)入賞、世界クロスカントリー選手権日本代表等の実績を持つほか、ユニバーシアードでは金メダルも獲得している鈴木選手は、社会人となってからさらに大きく躍進し、2015年北京世界選手権5000mで9位の成績を収めるなど5000m・10000mでオリンピックや世界選手権を舞台に活躍してきた選手です。今年、北海道マラソンで、初めてマラソンにチャレンジ。2時間28分32秒をマークして優勝を飾るとともに、MGCファイナリストに名前を連ねることとなりました。
初めて挑んだマラソンの感想は? 東京オリンピックに向けた展望は? 初マラソンから1カ月半ほど経った10月中旬、日本郵政グループ女子陸上部寮のトレーニングルームで話を伺いました。

◎取材・構成/児玉育美(JAAFメディアチーム)
◎写真提供:フォート・キシモト

>>【MGCファイナリスト】鈴木亜由子選手インタビュー Vol.1


クラブチームで、のびのびと才能を開花
「得意淡然、失意泰然」をモットーに


―――ちょっと遡って、子どものころの話を聞かせてください。鈴木さんは学校の部活動ではなく、「豊橋陸上クラブ」というクラブチームに所属して陸上に取り組んでいました。もともと陸上を始めたきっかけは?
鈴木:私の実家は、陸上競技場と、本当に目と鼻の先という近さだったんです。うちは自営業で米屋をやっていて、両親が忙しかったので、クラブチームに入れさせられました。たぶん、“土日に半日預かってもらえるかな”というような(笑)、軽い感じだったのだろうと思います。
―――入ったのはいつですか?
鈴木:ちょうど小学校2年生の秋から冬にかけてのころです。
―――短距離とか、いろいろな種目の練習をやるなかから、長めの距離をやるようになっていったそうですが…。
鈴木:そうですね。冬になると駅伝だったり800m走だったりを走って、けっこう得意なのかなと思っていました。
―――その一方で、豊城中学校では、バスケットボール部に所属していました。
鈴木:そうなんです。小学校のころからミニバスケットボール部に入っていたので、小・中はずっとバスケットボールとの両立でした。でも、バスケットボールをやっていたことで、ボディコントロールとか、瞬発力とか、持久力とかが本当にバランスよく鍛えられました。運動神経って、小さい、そういう年代に一番発達するので、その時期にいろいろな動きができたことは、すごく今につながっていると感じます。
―――中学では、なんと2年生の段階で、全日中800m・1500mの2種目で優勝を果たしています。3年生のときは、800mはゴール前で転倒してしまって…。
鈴木:(笑)そうなんですよ、派手にこけましたよね(笑)。
―――(笑)、思いがけないアクシデントもあって、2年連続2冠は逃しましたが、1500mでは自己新で連覇を果たしています。中学校のころから注目される存在だったわけですが、陸上をやろうと方向を定めたのはどのあたりだったのですか?
鈴木:陸上を突き詰めてやりたいと思ったのは、社会人になるにあたって、日本郵政グループを選んだときです。「実業団に行こう」と思ったときに決めました。
―――では、時習館高や名古屋大では…?
鈴木:まだ、いろいろな方向を探りながら自分のペースでやっていた感じです。
―――大学1年の2010年には、モンクトン(カナダ)で行われた世界ジュニア選手権(現U20世界選手権)に出場して5000mで5位に入賞。アフリカ勢を除くとトップという成績でした。優勝したゲンゼベ・ディババ選手(エチオピア、1500m世界記録保持者。)を筆頭に、上位選手はすごい顔触れです。印象に残っていることは何かありますか? そのときが初めての国際大会だった?
鈴木:そうです。海外に行くのも含めて全部初めてでした。私、そのとき、世界ジュニアという大会自体を知らなくて、そして、代表に決まったことも、(同学年の)藪下さん(明音、当時立命館大、現豊田自動織機)から「亜由子、決まったよ」みたいな感じで連絡が来て知ったんです。「え、なに? その大会」というところから始まって、「え、選ばれた? え、海外? え、外国人と走るの? ワクワク!」みたいな感じで(笑)。とにかく楽しかった思い出しかないです。
―――そのあと2013年のカザンユニバーシアードでは、10000m金、5000m銀と2種目でメダルを獲得。また、世界大学クロスカントリー(大学3年時)、世界クロスカントリー(大学4年時)にも日本代表に選ばれています。そのあたりから、取り組む距離を長くしていったのでしょうか?
鈴木:意図的にというよりは、自然に、ですね。(故障などもあり)脚への負担というのもあったと思うし、自然に長い距離を走るようになっていくことで、適性が見えてきたかなと思っています。
―――これまで競技を続けてきたなかで、自分の強み、弱みってなんだと思いますか?
鈴木:「強み、弱み」ですか? 強み、うーん、なんだろう? (少し、思案して)自分のモットーとして「得意淡然、失意泰然」という言葉があるのですが、どんなときもぶれずに、変に落ち込むこともなく、また結果とかに左右されずにできるところかな、と思います。
―――逆に、ここが弱いというのは?
鈴木:「あまりその言葉を使うな」と言われるのですが(笑)、優柔不断なんですよね。「慎重って言え」って言われますが(笑)。
―――なるほど、「選択を、慎重にするタイプ」ということですね(笑)。
鈴木:そうですね(笑)。わりとこう、いろいろなことで悩むタイプで、決断が遅れることがあって…。(弱みは)そこかな、って思います。
―――でも、マラソンに関していえば、決断が早かった…。
鈴木:あ、そっか。そうですね。心が決まれば早いのですが、その前の段階ではかなり「ああでもない、こうでもない」って悩んで話し合って、というのがあるので…。本当に心が決まるまでは「え、まだ悩んでいるの?」という感じです。
―――ご自身のなかで、納得というか、“肚に落ちる”ということが必要なのでしょうね。
鈴木:そうですね。


決まっているのは「2019年9月15日のMGC」
トラック種目にも、可能性を秘めて


―――東京オリンピックに向けて、マラソンの選考では、MGCという今までになかった仕組みができました。MGCについて、初めて概要を聞いたとき、どういう印象を持たれましたか?
鈴木:すっきりしていていいかな、と思いました。今まで物議を醸すことが多かったですし、本番と同じ条件で競って、そこで勝ち残った人が本番を走るというのは、すごくいいシステムだなって思いましたね。
―――MGCが決まった時期は、鈴木さんご自身はまだマラソンをやるか、トラックで狙うのかというのは、まだ見えていない時期だったのでは? その段階で、マラソンに挑戦するイメージというのはあったのですか?
鈴木:まだ、あんまりはっきりとはしていなかったです。ただ、そういうシステムが導入されるからには、もう(東京オリンピックまでに)あんまり時間はないんだな、と感じましたね。やはりどこかで(マラソンを)走らないといけないな、という思いにはなりました。
―――それが、先ほど仰った「まずは1本走ってみて」ということにつながるわけですね。
鈴木:そうですね。
―――次のレースに向けては、どういう想定を?
鈴木:まだ決まっていない…(笑)、こういうところ(が優柔不断)なんですよね(笑)。本当は、ちゃんと決めて、そこに向けて自分の身体を持っていくというのがベストなのですが、まだ決まっていない状態です。
―――決まっているのは、来年9月15日、MGCに出ること。
鈴木:そうですね。そこにいい状態でもっていくこと、それはマストだと思っています。
―――そのために何が必要になってくるでしょうか?
鈴木:筋力強化もそうですし、ランニングエコノミーというか、走る動作でもまだまだ改善できるところがあります。あとは単純に、しっかり継続して走るということが、大前提かなと思っています。
―――わりとケガに苦しむことが多かったですものね。
鈴木:そうなんです。でも、そこは誰もがみんな、どこかで折り合いをつけて、しっかりトレーニングして、結果を出していると思うので、やるべきところはちゃんとやらないといけないと思っています。
―――鈴木さんの場合は、一方で5000mや10000mでの可能性も十分にお持ちです。トラック種目への思いは?
鈴木:トラックでもまだまだ行けるんじゃないかなという思いはあります。マラソンをやったことで、また違う感覚でトラックを走れるのではないかと思います。
―――どういうところが違ってくると思いますか?
鈴木:うーん、どういうところでしょうか? スタミナは、しっかり脚がつくれていることで、最後まで持つかなと思います。また、マラソン練習をやっていたときに、そんなにスピードが落ちなかったので、うまくペースにはまれば10000mも今までより、すーっといけるんじゃないかと思いますね。5000mとなると、もうちょっとスピードが必要だと思うのですが、10000mだったらマラソンのスピードでもいけそうな感じがします。
―――それでは、東京オリンピックに対するイメージというのは、鈴木さんのなかでは、まだ具体的に「マラソン」とか、「トラック」とかと、明確にはなっていない?
鈴木:はい。ただ、先にMGCがあるので、まずはそこをしっかり取りにいきたいな、とは思っています。
―――今後、「もっとこうしたい」とか、「ここを強くしたい」と思う点はありますか?
鈴木:常に、挑戦し続けたいなというのはあります。アスリートである以上は、やはり競技に真摯に向き合っていきたいなと、いつも思っています。
―――関根さん、鍋島莉奈さん(※2017年ロンドン世界選手権、2018年アジア大会5000m代表)と、チーム内にいい仲間であり、よいライバルでもある選手がいらっしゃいます。刺激を受けているのでは?
鈴木:みんなが、いい結果を出すと嬉しいです。「次は、自分も」という思いになりますし。普段の練習でも、「ああ、こういうことをやっているな」とかと、互いに参考にしながら力をつけているので、これからも、そういう姿勢を大事にして、強くなっていけたらなと思いますね。
―――ありがとうございました。次のレースを楽しみにしています。

(2018年10月12日収録)


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